本日、グロービス経営大学院東京校の卒業式で、271名がMBAを修了。講師を代表した数名としてスピーチさせていただいた「贈る言葉」をブログにもアップします。
(レセプションでは持ち時間3分なので、エッセンスしかお話できていないため、全文は以下をご参照ください!)
毎年させていただいている「自由」の話の2015年バージョンです。
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皆さん、ご卒業おめでとうございます。今年は東京校のGMBA生271人がご卒業とのこと。リーダーシップ科目など多数のコースをお教えしているので、7割くらいの方にお教えしたことがあるようです。本当におめでとうございます。
卒業にあたり「自由」ということについて、お話したいと思います。キーワードは3つ「くじ、とも、くせ」。キーワードは2015年バージョンです(ちなみに2014年は「くじ、いぬ、あめ」)。
グロービスでは自分の使命である「志」について考え、卒業にあたっては、志の表明をされたと思います。表明された志が、固まっている、という方も、まだ暫定である、という方も、いらっしゃると思います。
そこで思い浮かべていただきたいのは「自由」ということです。自由とは、わがまま、好き勝手、という意味ではなく、仏教用語で言うところの「自らに由る(おのずからによる)」という意味の言葉です。ユダヤ教では、死ぬ前に必ず「お前はお前であったか?」という問いが立てられるそうです。
自由とは「自分の使命を見つけ、自分らしいスタイルで問題解決をする人生を、自らの意志で歩む」ということではないかと私は解釈しています。人が決めた人生、人に認められるための人生ではなく、「自分がワクワクするフィールドで課題解決をし、活躍し、価値を創る=自由」ではないかと思うのです。
職業寿命が50年もある今の時代、この「自由」を見つけられるかは人生の豊かさ、充実度を考えた時に、非常に重要になると思います。
この「自由」を勝ち取るための皆さんへのキーワードを3つ。「くじ、とも、くせ」です。「キジ、犬、猿」ではありません(笑)。
まずは「くじ」ーこれは「宝くじ」のこと。「買わない宝くじは当らない」。
この2年間のMBA生活での皆さんの最大の学びとは「己を知る」ことだったのではないかと思います。志の醸成や発見はもちろん、自分の能力の客観把握、学習方法、得意な役割、価値観、などクラス内外での被我の比較と内省によって、自己把握ができたはず。ここからは学びを実行する、というステージです。
そのためには、とにかく「打席に立つ」ことが重要。リスクを取り、実行する中でしか、本当の「自由=使命」は見えてきません。転職や起業だけを進めているのではありません。大企業の中での変革、それも大きな話でなくとも、自分の立つ現場でリーダーシップを発揮する=宝くじを買う行動を起こす、ということが重要です。
加えて、「自分の志、自由が何か」ということは、まず何かの宝くじを買って、実行して見る事で初めて見えてくるものかもしれません。私の場合にも、ジャングルジムのように、一見違う方向へと登ってみる行動の結果が、今に繋がっています。キャリアドリフト、Planned Happenstanceのように、変化の速いこの時代、打席に立つことによって初めて遭遇するセレンディピティも多く、そこから想定外の「志」(今は暫定の志の人も)に巡り会える人も多いはずです。
ここで重要になってくるのが「機会開発」=活躍の機会を作る能動的努力です。ここからの皆さんは、能力開発だけでなく、この機会開発=社内外での自身のマーケティング活動によって機会に「想起される」ための努力が、打席数に関係してきます(詳しくは、拙著『人脈力』をご参照ください...笑)。
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次に「とも」ですが、これは「友であり□、お供」のこと。フォロワーやスポンサーのことを指しています。
変化が速く、課題が複雑な今日、課題は一人では解けず、桃太郎の「キジ、犬、猿」のような仲間が必要です。皆さんは、この2年間の多くのグループワークなどで、自分はどんな人と組んだら力を発揮できるのか、見えてきた人も多いのではないでしょうか。
フォロワーがワクワクしてついてきてくれるための「きびだんご」は何か、を洞察し、共感を得る、心のスイッチを入れるためのメッセージが必要になります。ここで語る「成し遂げたいビジョン」は、表層的なストーリーではフォロワーは作れません。自分のリアルな原体験に結びついた、共感を得られるストーリーが必要になります。
しかも、実行のタイミングも重要。くれぐれも間違ったタイミングに一人で竹槍で刺しに行き、犬死にすることのないように。結果を出すためには「しなやかさとしたたかさ」が重要です。
また、皆さんがこれから「自由」を獲得する旅に出るにあたっては、自分を刺激し、気づかせ、機会を提供し合い、引き上げあっていく「仲間」として、メンターやフォロワーの「とも」を意識的に作っていくこともここでは必要になるかと思います。
加えて、今、特に注目されているのは、スポンサー。上記に挙げた「機会開発」のために自分を打席に立たせてくれるようなスポンサーを、どのように巻き込んでいくのかの「したたかな」戦略も重要になります。
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最後に「癖」です。
ここでは「自分に最適な努力方法をいかに見つけられるか」。生涯学習的な努力を「努力」と思わずに済むような「習慣」「癖」のレベルにまで挙げていける「方法」を見つけよう、ということです。
年間200人くらいの経営者のご相談にのっていますが、良いリーダーは「努力し続けられる能力」と「自分に適した努力方法」を確立しています。皆さんには、ぜひ、これを見つけていただきたいと思います。
例えば、学長の堀さんは、この10年間ほどで、ダボス会議などの世界レベルの会議でファシリテーションやスピーチされるほど、英語に磨きをかけていらっしゃいます。堀さんは、英語力のブラッシュアップのために独自の努力方法を確立されています。が、これは万人に効く方法でもないはず。
英語でもダイエットでもスポーツでもそうだと思いますが「持続的に努力できる」方法は、人によって差異があります。脳科学的にみても、学習方法の適性は、人によって異なります(大きく3種類くらいに分類されます)。
この「自分にとって、努力しつ続けられる方法」を確立し、無理なく「やり続ける」、「生活環境にまで埋め込んでしまう」「生活習慣=癖のレベルにまでしてしまう」ことが、長期間でみると大きな差異を生んできているようです。
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以上が、沢山のリーダーと自分自身の経験から、「皆さんが自由を勝ち取る旅」に必要なキーワードではないかと思っていることです。
自分らしいスタイルで、自分のワクワクするフィールドで、仲間とともに「共創」する「自由共創」。この自由共創の実現に向かって、皆さんが活躍し、世界で多くの問題が解決されていくことを心から楽しみにしています。
一緒に頑張る仲間が271人も輩出されたとのこと、本当に嬉しいです。心から応援していますし、私も皆さんと共創の機会を得られれば、と思っています。
本日は本当におめでとうございます!
グロービス経営大学院教授岡島 悦子