日米人材市場の比較をする際に「日本企業はジェネラリストを作ろ うとしているし、JD (Job Description)の不明確な仕事が多い」から「日本人は自分の仕事上での強みを表現しにくい」と昔から言う人が多い。これ、そろそろ止めませんか?

企業内で新しいプロジェクトに人をアサインする際には、誰かがキーワードを複数いれた『脳内検索』」をしていることが多い。「新規事業開発×プロジェクトマネジメント×B2C×教育×アジア×英語…」。この検索用のキーワードこそ8年前の拙著『抜擢される人の人脈力』で私が「タグ」とよんだもの。ミソは市場価値は「タグの掛け算」というところ。

今の時代、「自分の強み」を「機能(マーケティング)」や「業界(消費材)」だけで語れるほどシンプルではない。得意な機能や業
界も「意味が出る程度=検索キーワードとして機能する細かさ」まで「因数分解」する必要がある。しかも、市場価値のあるタグというのは、分解された機能、業界、だけでなく、例えば、解決課題の種類、志向、スタイル、資質、などのタグの掛け算でもある。

ダイバーシティ推進のワークショップ等で「あなたの強みは何か」と聞くと、漠然としか答えられない方々が、タグに必要なレベル感を示した上(例えば、ということで私のタグ一覧を開示する、など)でタグを書き出し始めると、自分の意外な強みに気づくケースが多い。「営業」といった大括りでは、意味合いが出ないので、「新規顧客営業」×「地方中小企業」とまで細かくしてもらう。

こうした
タグの3つ以上を掛け算にすると、いきなり希少性がぐっと増すことを再認識できる。もちろん、希少性だけでなく、市場でそのニーズがあるかという「市場性」も重要。しかも、市場性はいつも動いている。今、求められている仕事の「タグ」を投入し、時代に合わせてタグを増やしていくことも、重要だ。

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多くの人に活躍の機会が提供できるという意味で、私は企業の「成長が全てを癒す」と思っている。ただ、こうした企業ばかりでない中で、多くの若者は「成長の機会」を自ら勝ち取っていかなければならない時代になっている。

その際に「何ができるの?」と聞かれた際に、「自分のタグの掛け算」をassertiveに説明できる、あるいはタグが流通していて、誰かの「脳内検索」にひっかかり「登用、抜擢される」ことは、「打席に立つ成長の機会」を必要とするすべての人に必要な「自分マーケティングスキル」なのではないかと思う。

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人材市場でも「クラウドソーシング」が今後どんどん進むだろう。社内外を問わず、クラウドソーシング的に人のキャスティングをすることも増えるだろう。

自分のタグを明確にし、キャリアドリフト的にタグの要素をひとつずつ増やす。例えば「7つある自分のタグの4つの掛け算を満たす人材は社内外に私しかいない」となれば、働き方の自由度もぐっと増す。

これは、ダイバーシティ推進で女性のキャリア開発にあたって私が提唱している
「前倒しのキャリア開発」にも役立つ。一本道の「はしご型」のキャリア開発ではなく、横道にそれたり、違うオプションをとったり、という「ジャングルジム型のキャリア開発」の形成もしやすくなる。

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ダイバーシティ推進、キャリア開発、のワークショップを多数実施し、人材市場のクラウド化といった領域で、経営者たちとのディスカッションをする日々の中で、
「タグの掛け算のキャリア」の重要性をあらためて痛感している。もっと丁寧にこの概念を説明していくと、「新しい時代のキャリア開発」がしやすくなるのではないか、と思っている次第。

代表プロフィール

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岡島悦子(おかじまえつこ)

プロノバ 代表取締社長/
ユーグレナ 取締役CHRO

経営チーム強化コンサルタント、ヘッドハンター、リーダー育成のプロ。
「日本に"経営のプロ"を増やす」ことをミッションに、経営のプロが育つ機会(場)を創出し続けている。

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