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icon_dot.gif『40歳が社長になる日』(岡島悦子著、幻冬舎)を出版いたしました

弊社岡島悦子の新刊、 『40歳が社長になる日』がお陰様で7月29日に発売になりました。

岡島の出版意図と想いをご紹介させていただきたく、「はじめに」を全文公開いたします。


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『40歳が社長になる日』はじめに


「2025年、日本の大企業にも40歳社長が多く誕生する」
 
私がこの本でお伝えしたい将来仮説であり、先見性のある社長がリードする企業では、そのための取り組みがすでに始まっています。

「未来をつくる人をつくる」
 
私の今の仕事を一言で言えば、こういう言葉になります。
 
これまで 15 年以上にわたって、社長のリーダーシップ開発支援をしてきました。今では年間 200人以上の経営者のリーダーシップ開発、経営チーム強化、次の社長指名及びその登用計画であるサクセッション・プランニング(後継者育成計画)といった戦略的経営者開発コンサルティング業務にハンズオンで携わっています。
 
近年のキーワードは「非連続の成長」です。成熟時代を迎え、企業は「連続の成長」が極めて難しくなってきています。求められているのは、イノベーション創出を必然にする経営チームを組閣することです。
 
私自身は、経営の実務家であり、経営学者ではありません。三菱商事からキャリアをスタートさせ、ハーバードビジネススクールを経て、マッキンゼーで戦略コンサルタントを務めました。その後、経営大学院やベンチャー・キャピタルを運営するグロービスで経営人材紹介会社 の社長を務めた後、 10 年前に経営人材開発コンサルティング会社「プロノバ」(プロの場)を創業し、5社の社外取締役を務めるなど幅広く経営に関わる仕事をしています。
 
私のことを、「経営者に伴走するかかりつけ医」と呼んでくださる経営者も多いのですが、 経営書などには記されていない生々しいリアルな課題≠ニ日々向き合ってきました。
 
現場は学びの宝庫です。この15年間、社長のみなさんとともに、「将来の経営チーム能力」を定義し、能力開発課題を特定し、数千枚の「具体的処方箋」を書いてきた実績があります。こうしたリアルな事例を抽象化することによって生まれてきた「経営者のリーダーシップ開発の汎用的な知恵」を私やクライアント企業だけにとどめておくのはもったいない、このタイミングでより多くの経営者やビジネスパーソンに伝えなければいけないことがあるのではないか─そう感じて生まれたのが、本書です。
 
まず何よりも伝えなければいけないと感じているのは、企業経営の舵取りが難しくなる中、「経営トップの役割」の重要性が急速に高まっているということです。そして、求められるリーダーシップが大きく変化してきているということです。
 
みなさんはリーダーと聞くと、カリスマ性があり、みなをぐいぐいと引っ張っていく、ステ ィーブ・ジョブズのようなリーダーを思い浮かべるかもしれません。しかし、誰かカリスマが リーダーシップを発揮して、大きな旗印のもとに命令型で多くのメンバーを連れていく、というやり方では、もううまくいかなくなってきているのです。
社会が成熟する中、企業は非連続の成長をせざるを得ない状況です。そこに必要なのは、イ ノベーションです。しかし残念ながら、従来型のリーダーシップでは、イノベーションを起こし続けるのは難しくなってきているのです。
 
これからの時代のリーダーシップは、こうした古いタイプのリーダーシップではありません。実際、アメリカでも「Collective Genius (集団天才)」をはじめ、さまざまな新しい概念やキーワードが出てきています。
 
私が強く共感したのは、恩師であるハーバードビジネススクールのリンダ・ヒル教授が提唱 している「逆転のリーダーシップ」「羊飼い型リーダーシップ」です。この新しいリーダーシップについて、本書で詳しく解説していきます。
 
特に共感したのは、これから企業に求められるイノベーションのためには、顧客インサイトをいかに捉えるか、しかも、1人の天才ではなく、集団天才型のチームで「顧客共創」をする ことが極めて重要になってくる、というポイントです。
 
社会実験と市場テストを繰り返すことで、あるいは越境して離れた領域をつなぐことで、顧客の洞察、市場の洞察、社会の洞察を引き出していく。多様な異能の力を組み合わせて、顧客も巻き込みながら、既存のバイアスを壊し、新しい顧客価値を共創していく。そうでなければ、見えてこないニーズ、サービス、プロダクトがあるからです。早稲田大学ビジネススクールの入山章栄准教授の言われる「知の探索」です。
 
これが、大きなイノベーションにつながっていくのです。
そしてもうひとつ伝えなければいけないことがあります。それは、不確実な時代に意思決定をしていくことが求められる次の経営トップは戦略的かつ計画的≠ノ生み出していかなければいけないということです。リーダーは偶然に生まれるのではなく、必然的に輩出されるような「仕組み」を組織に内在化させなければなりません。
 
しかも、次の経営トップは大企業でもぐっと若返ると私は考えています。そう遠くない未来、伝統的な上場会社でも40歳の経営者が生まれるようになるはずです。なぜなら、そこに必然性があるからです。
 
すでにベンチャー企業では、そうした事例が生まれ始めています。ベンチャー企業は 30 代、40 代の創業経営者も多いですが、創業者の後を継ぐ経営者がまだ十分には育っていないケースがほとんどでした。2017年、動画配信を手がける DMM.com において、56歳の創業者から34歳の新社長へとバトンが渡されましたが、こうした例が大企業でも生まれてくるはずです。
 
どうして若い人材が抜擢される必要があるのか。それは、デジタル革命の経営に対する影響力が非常に高まっているためです。
 
ビジネスにも、企業経営にも、テクノロジー理解が欠かせないものになっている中、コンピュータやスマートフォン、インターネット、ビッグデータ、AI(人工知能)、ロボット、自動運転、EV(電気自動車)、ドローン、ブロックチェーンといったテクノロジーをいかに自社の事業開発・組織開発に活かせるかが、企業の稼ぐ力を左右するようになってきています。
 
こうしたテクノロジーに若い頃から自然に触れている、「デジタル・ネイティブ」世代が、 すでに活躍を始めているのです。この世代こそ、次世代を担うにふさわしいスキルと感性を持っているのです。これ以外にも「40歳社長が必要である」理由がいくつもありますが、詳しくは後ほど解説していきましょう。
 
ただ、読者である経営者の方、ビジネスパーソンのみなさんにぜひ知っていただきたいのは、先見性のある経営トップのいる企業では、すでにこれを見越した次の社長候補づくりが、現社 長の絶大なるコミットメントのもと「仕組みとして」始まっている、ということです。
 
さらにもうひとつ、日々、多くのビジネスパーソンと触れ合う中で伝えなければいけないと感じていたのが、新しい時代のキャリアづくりです。
 
ベストセラーとなったロンドン・ビジネススクールのリンダ・グラットン教授による『ライフ・シフト』(東洋経済新報社刊/2016)でも言及されている通り、現在、50歳未満の人は100歳を超えて生きるだろうと予測されています。つまり、「人生100年時代」が訪れるわけですが、これはすなわち働く期間も長くなっていくことを意味します。
 
日本ではこれから、人口減とともに労働人口の減少が進んでいきます。一方で、テクノロジーの進化や顧客ニーズの高速変化から、ビジネスモデル寿命はどんどん短くなっていきます。私たちを取り巻く働く環境は激変していくのです。つまり、これまでのようなキャリアの考え方では、もうやっていけなくなる可能性が高いのです。
 
それに加えて、すでに日本でも流行語となっている「ダイバーシティ推進」や「働き方改 革」も、働く環境を大きく変えていくでしょう。
 
学生の大企業人気は相変わらずですが、これからは「安定」の意味が変わっていきます。本当の「安定」とは、安定した会社に勤めることではなく、「いつでもどこでも自分で稼げる人間」になっておく、ということです。
 
おそらくこれから、新しい時代の「安定的な働き方」をする人、そういう働き方を求める人が増えていくでしょう。AIの登場も相まって、これまでになかった職種や職業が生まれてくるでしょう。となれば、リーダーも経営も変わることは必然です。
 
私自身、社外取締役やアドバイザー、教授など 30 以上の役割を持つ「ポートフォリオ・ワーカー」ですし、新しい領域の仕事をつくってきています。そんな新しい働き方についても本書 では触れていきます。
 
未来のことは不確実で誰にもわからない、と言われます。しかし、「これから数年で大変な変化が起きる」ことだけは確かです。これからの時代に、何が起きるのか。何が必要になってくるのか。とりわけリーダーにとって、これからリーダーを目指す人にとって何が重要になるのか。
 
本書では、この変化への準備として、「10 年後の社長をつくる」ために、私と経営者たちが日々何を議論しているのか。経営の現場ではすでに何が実践されているのか。そのリアリティをお伝えしていきたいと思います。「みらいをつくる人をつくる人(経営者)」「みらいをつくる人(ハイポテンシャル人材)」双方にとって「40歳社長輩出」への意義と努力方法のヒントになれば幸いです。

 

岡島悦子

(2017年7月29日)

 

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