最近取材していただく機会も増えているということで、先週、メディアトレーニングに行ってきました!

会社のトップとして伝えたい「キーメッセージ」を構築し、伝える訓練、を8時間カンヅメで特訓。実は、このエッセンスは「企業の採用力をあげる」ことにも非常に通じるな、と思った次第。

ということで、ここで学んだことを「採用力アップ」に応用するとどうなるか、についてエントリーしてみたい。

***

このブログでも、最近のジョブマーケットが「超売り手市場」であることは再三申し上げてきているが、この「超売り手市場=The War for Talent (人材獲得競争)」をの勝敗を決めるのが、企業の採用力

採用力については、定義はいろいろだと思うが、グロービス・マネジメント・バンクでは以下のように定義している。

採用力=①企業の魅力度×②魅力を伝える力

①の企業の魅力度とは、因数分解すればいろいろな要素に分解可能。ここでは全部をあげることはしないが、例えば、業界の成長性、同社の競合優位性、ビジョン・ミッションの明確さ、優れた経営者と経営チーム、企業文化等々。

おわかりの通り、どれも一朝一夕に魅力度をあげられるような性質のものではない。従って、採用力をあげたくても、業界の成長性がないのに「ある」というわけにはいかず、採用力をあげたくてもジワジワとしか変化できない要素が多いと言える。


ところが、②については、戦略と訓練しだいで、ある程度なんとかなる、いわば可変のものであろう。経営者や採用担当者のコミュニケーション力による、と言ってしまえばそれまでなのだが、それでは解決策が施せない。もう少し汎用的な打ち手、について考えたい。


採用活動は企業のマーケティングであり、チャネル(メディア)も魅力を伝える力のひとつ。販促のメッセージをどう考えるか、もそのひとつである。


まさに今回私が受けたメディアトレーニングに通じるのはこの部分。IRと同じで、企業業績については、決算発表日当日には経営者がどうしようもないが、その数字の意味するところを「どうアナリストに伝えるか」は経営者の手腕によるのと非常に類似している。


今回受けたトレーニングでは、「想定顧客に対して自社を売り込む」という御題で以下をつくる、というものであった。これを応用し、ぜひ企業経営者の皆さんに「採用力の②=企業の魅力を伝える力をあげる」という趣旨で「明確なメッセージをつくる」という御題で、以下について考えていただきたい。キャッチフレーズを作る要領である。必ずや採用力を「ググッと」あげられるのではないかと思う。

 

  1. 将来仮説(これからの時代、業界・市場はこのようにパラダイムシフトしていくだろうという仮説)
  2. 課題(1のパラダイムシフトが起これば、業界・市場にこのような課題がおきてくるだろう)
  3. ソリューション(自社はこのパラダイムシフトに対して、このような解決方法を持っており、社員にはこのような成長機会を提供できる)
  4. 差別化要因(このような差別化要因を保有しているため、他社ではできない成長機会を獲得することができる)
売り手市場の状況の中では、社内にも成長機会やワクワクする仕事が存在しているケースが多い。それを捨てて転職してもらうためには、「ストーリー性のあるメッセージ」が必要になる。

言い換えれば、その候補者が現在の勤務先の上司や同僚に「退職理由の『大義名分』」が絶対的に必要なのである。「私は〜な使命・課題にどうしても携わりたいので、転職します・・・」という「〜」の部分を埋めてあげる作業である。


例えば、

  • PC業界で起きてきた現象はこれから必ずモバイルの世界でおこる・・・
  • 日本が競争優位性を持つアニメやゲームを日本の基幹輸出産業にしていくには、アートの世界に経営を導入していく必要がある・・・
  • 知的資本経営の時代がやってくるが、弊社ではいち早くここに注目し・・・
  • 環境分野は成長が見込まれるが、巨大企業が存在せず、必ず合従連衡が起きる・・・
  • マスメディアから個人主導のコンシューマー・ジェネレーテッド・メディアの時代が・・・
  • 流通・小売の一時的対処は終わり、ここから根本的に強くしていく必要が・・・

面白いもので、ヘッドハンターや面接者を通じて、上記の1〜4の項目が「明確に」「わかりやすく」伝えられれば、候補者は「さも自分が考えたかのように」転職・退職理由を人に説明してくれる。伝え続けるうちに、それが自分の使命のように感じ始める。反対されればされるほど、上記を力説し、どんどんと自分の言葉としてこなれてくる。他の選択肢や現職に留まることに対し、強い意志を持って意思決定をできるようになる。

大事なことは、経営者がコミットして自分の言葉で「自社が選ばれる理由とその背景」を考え、現場にまで伝え続けることである。どの面接者もが一貫した「強烈な」メッセージを伝え続けられれば、採用力は確実に向上する。


もちろんその「殺し文句」が候補者にとって有効か、ということは相対感を持つ私たちのような者にご相談いただくことは可能である。しかし「言霊(コトダマ)」ではないけれど、経営者がオーナーシップを持って自分で作りこむコミットメントこそが必要なのである。


お薦めなのは、最近採用したイケテイル人に「なぜ入社したのか」の理由を聞いてみること。以外に自社では見えない「良いストーリ(場合によっては懸念事項)」が見えるはずである。


候補者の方々も、ぜひ経営者の「将来仮説、時代認識」といったものを質問してみてはいかがだろう。経営者の大局観、といったものを垣間見れるかもしれない。


グロービス・マネジメント・バンク 代表取締役 岡島悦子

プロデューサーのおちまさと氏が

「最近は恋愛において『青い鳥症候群』ではなく『白馬の王子待ち症候群』のヒトが増えている」

と言っていたらしいが、同じ現象が「超売り手市場」の現在のジョブ・マーケットでも起きている。今回はこの「白馬の王子待ち 症候群」とは何か、そして何が悪いのかについて、見ていきたいと思う。

***

景気が悪い時には、「社内環境的に成長できる機会がない」ということで、現状に「不満」があって転職をする人も多い。

「より成長できる機会を求めること」自体は素晴らしい。ところが、どんな環境下でも「自分が活躍できないのは環境のせい=他責」としてしまい、「私にはもっと活 躍できる環境が必要・・・」と次々と仕事を変わる、いわゆるジョブ・ホッパー=「青い鳥症候群」となってしまう人がいる。これはまずい状況である。

ジョブ・ホッパー=問題解決能力のない人、と見られるケースもあり、企業によっては「4回以上転職している人は、すぐにあきらめてしまったりする可能性が高いので、うちではお断りしています」とはっきり断られるケースもある。

景気が悪い時には、この「青い鳥症候群」の人に出会うケースが多い。

***

ところが、バブル期を思わせるような「売り手市場」の現在のジョブ・マーケット。最近「青い鳥症候群」よりも重症の「白馬の王子待ち症候群」の人に出会う確率が急増しているような気がする。

景気の回復もあって、企業業績は回復。「コスト削減」といった「後ろ向きの仕事」から解放され、現状の仕事には「満足」という人が増加。

特に優秀な人材であれば、社内の面白い課題に直面して活躍しているケースも多い。結果として「ジョブ・マーケット(転職市場)」には、イケテイル人が出現しにくくなっている。

ところが、どうもこの「満足」セグメントの方々、一般的に言って

  • 「満足で充実」=少数派
  • 「満足だが不安」=多数派

という状況のようである。

世の中に、社長本や起業家を特集した記事があふれている。テレビでも、情熱大陸、 プロフェッショナル仕事の流儀、 カンブリア宮殿など(どれも私の好きな番組ですが・・・)、人に焦点を当てた番組が好評のようである。

登場する方々を見て「いいなぁ」と思い、漠然と「自分もあんなチャンスに恵まれればなぁ」と思っている方も少なくないようである。つまり、今の状況には「満足」しているんだけれど、このまま行ってもどうやったらあこがれのロールモデルのようになれるのかは「不安」といった感じ。

事実、私どもにキャリア相談にいらっしゃる方も、

  • いつかは、●●さんみたいになりたいなぁと思っているんですよ、とか
  • いつかは、「ヒットメーカー」とか「●●の仕掛け人」みたいな仕事をしたいんですよ、とか

おっしゃる方が増えている。

ところが・・・

「それに向けてなにか具体的にやっていることとかありますか」という質問には、

  • 「何か始めなくてはとは思っているんですが、何から始めたらいいのかわからなくって・・・」
  • 「いつか自分にもチャンスがまわってくるんじゃないかと思うのですが・・・」
  • 「どうやったらヘッドハンターに声かけられるようになるんでしょうか」

という答えが返ってくることが、景気の回復とともに急増しているように感じる。まさに、「白馬の王子待ち」

これが、不景気な時期であると、同じように「このままではマズイ」と思っていたとしても、たとえ少し「青い鳥症候群」気味だったとしても、資格を取るとか、社内異動を画策するとか、転職を考えるとか、を少なくとも「検討する」という行動に出る人が多いような気がするのだが・・・。

やっぱり、景気も回復し、給与水準も回復している企業が増えている中で、「不安=危機感」にはならない傾向が強まっているようである。

 

でもですね・・・

断言しますが・・・

待っていても、待っているだけでは、「白馬の王子様」は現れません!

 

つまり、「どこかのタイミングで、仕事を思いっきりやって、何らかの実績を出す」ということをしない限りは、大抜擢されたり、ヘッドハンターから声をかけられたりすることはないのです。

ということは、漠然とした「不安」は不安のまま続いて、いっこうに解消されない。したがって、どんな時もナントナク「このままじゃ良くないよなぁ」とずーーーっと思い続ける。これって、あまり精神衛生上、ヨロシクナイ状況ではないかと思うのです。

 

「大成功」と言われるようなものでなくてもいいのですが、「転ぶまで思いっきり走る」くらい「走りきっている人」にしか、「白馬の王子様が現れるような幸運はない」と思ったほうがいい、という意味なのです。

 

いろいろな方にお目にかかっていると、活躍している方は、実はどこかの時点で、3倍速くらいで走った経験を持っているようです。おちまさと氏の「時間の教科書」じゃないですが、人のことを羨んでいる暇はないのでは・・・。

 

私は、ヘッドハンターだからと言って、むやみに転職をお薦めしたりはしません。慣れた社内の環境で走れない人は、新しい環境の中では走れないことが多いからです。

 

とにかく目の前のことを思いっきりやって小さな成功でもいいから勝ち取る。そのうえで、やっても、やっても環境要因のために自分が成長できない、と思った時に始めて、違う「成長の場」を検討する、ということでいいのだと思います。

 

「セレンディピティー(幸福な偶然)」は確かに存在すると思います。そして私たちヘッドハンターの仕事は、こうした「企業と個人の幸福な出会い」を創り出す仕事、であると思っています。

ただ、いろいろな事例を拝見していると、「思いっきり走る」経験をしたことがある人にしか、こういったセレンディピティーはおきないのではないかと思うのです。 

また「幸運の女神には前髪しかない」とよく言われますが、「思いっきり走る」経験をしたことがないと、この「幸運の女神に気がつかない」のではないかとも思うのです。

 

 ***

 

景気のいい時代というのは、それだけ企業にも個人にも「成長の機会」を勝ち取る可能性がある「チャンスの時代」だといえます。
 
こんな時代に「白馬の王子サマ」を待って「ゆでがえる」になっている人を見ると
「気づいて! みんな走ってチャレンジしているのよ!」
と叫びたくなってしまうのです。

「人が採用できなくって、人不足=成長のボトルネック・・・」とお嘆きの企業経営者の皆様、ぜひ、みんなで、
「待っているだけじゃ白馬の王子は出現しない、と気づこう」キャンペーン
を一緒にしかけていただけませんか。そうしたら、もう少し、売り手市場も解消するような気がするのですが・・・。

グロービス・マネジメント・バンク 
代表取締役 岡島悦子

「カーブアウト」という概念をご存知でしょうか。


「事業や技術を企業から切り出し、第三者の投資を受けて、戦略の自由度を高め、事業の成長を加速させる」という「カーブアウト」という手法が、今、注目されています。


厳密には定義も概念も違いますが、MBO、スピンオフ、スピンアウト、社内ベンチャー・・・という言葉の方に馴染みがあるなぁと思っておられる方も多いかもしれません。


今回は、投資ファンドのカーライル様グロービス・キャピタル・パートナーズ(GCP)と協賛で、ご好評いただいているセミナーシリーズ「経営のプロへのキャリア」の第五弾として、この「カーブアウト」を取り上げます。


「経営のプロ」へのキャリア選択肢の中で、①経営幹部としての転職、②起業、のどちらでもない「第三のキャリア選択肢」として今後増加が見込まれる「カーブアウト型」のキャリアについてのセミナーです。


カーライル様の投資先のウィルコム様、GCPの投資先のUSS様を実際のカーブアウト事例としてとりあげ、両社の経営者と両ファンドの担当パートナーが解説し、討議していきます。
「今手がけている事業を違う形で成長させたい」との思いから、キャリアの選択肢を模索している方に必見のセミナーです。


【第5回セミナー 「経営のプロ」へのキャリア】

 第三の道:「カーブアウト」というキャリア選択肢

 〜成長性のある技術・事業の組織的切り出し事例〜

【開催日】  2006.10.20(金)
【会  場】  グロービス東京オフィス 101教室
【パネリスト】

株式会社ウィルコム 執行役員 経営企画本部長 喜久川 政樹氏
ユニバーサルソリューションシステムズ株式会社 代表取締役社長 山口 浩行氏
カーライル・グループ マネージング・ディレクター 朝倉 陽保氏
カーライル・グループ ディレクター 吉崎 浩一郎氏
株式会社グロービス・キャピタル・パートナーズ パートナー 仮屋薗 聡一氏

【モデレーター】

株式会社グロービス・マネジメント・バンク 代表取締役 岡島 悦子

【特別協賛】

 カーライル・グループ株式会社グロービス・キャピタル・パートナーズ 

セミナーの詳細・申込はhttp://www.globis.co.jp/gmb/moveto/gmb_blog.html

前回の①外資系企業、②PEファンドの投資先企業に引き続き、今回は③COO人材が「オーナー経営者のいる企業」のNO.2として入社する際の「リスクとリターン」について考えていきたい。

【③オーナー系(創業者社長のいる)企業を懸念】

これも「経営のプロ」人材が会社を退職する際によく拝見する事例。

弊社では、前回のエントリーで分類に示した7つのタイプの内、「後継者候補」「後見人型」「参謀型」にあたる「右腕的人材を探して欲しい!」と、カリスマ経営者と言われるオーナー経営者からご相談を受けることがある。

 

オーナー経営者が、更なる拡大を望んでいたり、ご自分の役割をより限定しようとしていたり、と前回のエントリー同様、「経営課題と期待役割が明確」という点では、このタイプのNo.2ポジションも、「経営のプロ」への飛躍の「機会」としては、絶好のチャンスである。

 

落下傘的に入社するとはいえ、経営者の信任の下、権限をある程度担保されて入社するため、実績を構築できる可能性が高い魅力的なポジションである。

 

オーナー経営者とのフィットと信頼感醸造が重要であるため、面接や会食を重ねていただくが、まるで赤い糸で結ばれていたかのように「一緒にやりましょう」と意気投合し、No.2として入社していただくケースも多い。

その後、そのNo.2がしっかりと企業に溶け込み、実績を出し、オーナーは「オレの目に狂いはなかった・・・」と蜜月が続く。

 

とここまではいいのだが、ふとした所から歯車が狂い出す。No.2が企業に溶け込み、スタッフの信頼を勝ち取り、「●●さんが来てから、会社が良くなった」などという声が、オーナーの耳に数多く届くようになると、様相は一変する。

 

オーナー経営者が「オレが創った会社なのに・・・」と思い、No.2への「ハシゴはずし」が始まる。

 

「結局、社長の影を踏んでしまったようで、ラインからはずされ、また、自分と一緒にやっていたスタッフも、次々と本丸の部署から異動になりました。より前向きな気持ちで活躍の場を獲得するためにも、次のオポチュニティーを考えようと思います。」と言ったご連絡をいただくことがある。

 

人間力のある社長、と評判の高い社長でも、心のどこかで「独占欲」「嫉妬心」といったものが沸いてくることがあるらしい。上場企業ともなれば、企業は個人所有物ではなく「公の器」であり、オーナー経営者といえども、個人の嫉妬心を克己しなければならないのだろう。

 

「会社を伸ばしたければ、自分より優秀な人材を雇え」とは、会社を成長させる鉄則ともいわれている。しかしながら、経営者の器の大きさが企業の大きさの限界、となってしまっている企業も少なくないのが現実のようである。

 

もちろん、No.2と目されていた人物が、「次期社長の器ではない」と判断され、職務をはずされる、というケースも存在する訳であり、両サイドから話を聞かない限りは、「No.2はずしの真の理由」というのは、藪の中である。

 

とはいえ、「共同経営者として始めたNo.2以外」で注目を浴びる「カリスマの右腕的なNo.2」の数は非常に少ない現状を見ると、オーナー経営者の下でNo.2として成功するのは、なかなか難しいことなのかもしれない、と思うのである。

 

私たちは、経営者のご相談にのりつつ、その経営者の本質、人間力を理解し、なるべく正確に候補者の方にお伝えしたいと思っている。「人の目利き」の本領が問われる部分である。だが、すばらしい人間性をお持ちの経営者の方でも、窮した時や戦時にどう豹変されるのかが予測不可能な場合もある。

 

それだけに、よくある質問とはいえ、経営者とディスカッションさせていただく場合に「失敗の経験」を伺うようにしている。失敗をどう乗り越えてこられたかや、周囲の失敗をどの程度許容してきたか、等のエピソードで、その経営者の度量などを感じさせていただきたいと思う為である。

 

***

 

実際に「COO人材が欲しい」という経営者からご相談を受けるケースは、経営課題が明確な上記の①〜③の企業がほとんどである。

 

「この3つ以外で探して欲しい」といわれると、これ以外で外から敏腕の「COO的経営のプロ」を採用する必要性のある企業は極めて少ないのではないかと思っており、ヘッドハンターとしては本当に頭が痛いのが実情である。

 

したがって、これら3つのタイプのどれかではあるが、「この企業は例外」という明確な理由をもつ企業をいかに見つけられるかが、私たちの腕の見せ所であろう。

 

また、候補者の方のキャリア(経歴・タイミング)によっては、前述のリスクがリスクとならない場合も存在する。「経営のプロ」になるためには、リスクをとってでも「実績」を作らなければならないキャリアの旬を迎えている方もいる。

 

足繁くいろいろな経営者と密にお話をさせていただき、自分自身も精進しなければ、と思う毎日である。

 

グロービス・マネジメント・バンク 

代表取締役 岡島悦子

 

最近、企業の急成長や再生をドライブしてきた「経営のプロ」、それもCOOレベルの方から「当初のミッションは達成したので、新しい活躍の場を探したい」とご相談を受けることが増えている。そこで共通しているのが、次は「以下の3つ以外のNo.2のポジション」を探したいというご相談。

  1. 外資系企業 
  2. PEファンド投資先 
  3. オーナー系(創業者社長のいる)企業

「自分はゼロから1をつくる『起業家タイプ』ではないので、トップを支えるNo.2として貢献したい」という志向の方。
弊社は、「経営のプロ(通称ケイプロ)」人材を企業にご紹介している。「明確な経営課題があり、内部昇格ではなく、社外から経営者を採用したい」という企業は、どうしても上記3つのタイプの企業が多い。


今回は、この3つのタイプにCOOとして入社することのリスクとリターンについて、考えてみたいと思う。
「経営のプロ候補」の方々が、意思決定をする際の参考にしていただければと思う。「実績をつくる」というリターンは明確な場合も多いので、存在するリスクが、自分のキャリアにとって吸収可能なリスクなのかをお考えいただければと思っている。

また、COOやNo.2をお探しの経営者の方々には、候補者が応募や入社を懸念する理由、の参考にしていただければと思う次第である。

尚、トップを支えるNo.2と一口に言っても、多様な種類がある。弊社に「No.2を採用したい」とご相談がある場合にも、No.2が解決すべき経営課題の種類によって、以下のようなタイプに分類できるのではないかと思っている。

  •  後継者候補型
  •  後見人型
  •  参謀型
  •  変革推進ワンポイント・リリーフ型
  •  第二創業請負人型
  •  組織開発専任型
  •  執行専任型

この分類の説明については、長くなるので別の機会にゆずりたい。

***
さて、問題の「3つのタイプ」について、それぞれ考えていきたい。「経営のプロ」ともいうべき方が、次の機会を考える際に「除外したい」というからには、以前のキャリアでのトラウマも含め、それなりの理由があるはずである。


【①外資系を懸念】

ひとつめの外資系企業。
成果主義が整備された企業が多いため、能力が認められれば機会を勝ち取っていくことができ、非常に早回しで「経営のプロ」としての実績が創れる可能性の高い企業群。

「わかりやすい実績」をつくりやすい企業群として、「経営のプロ」を目指す人にも人気が高い。またグローバルな視点、活躍の機会を持てる、という意味からも、良いキャリア・オプションだと思う。

しかしながら、ある程度のマネジメント・レベルまで上り詰めると(日本のオペレーションへの権限委譲度合いによるが)、本国のヘッドクオーターに意思決定権が集中していたり、P/Lの権限はもらえてもB/Sの権限をもらえなかったりという理由から、日本での戦略オプションをあまり持てないフラストレーションを抱える「経営のプロ」は多いようである。

成果主義が徹底している結果として、若くして昇進し、比較的早めにグラスシーリング(見えない天井)を実感してしまう、というケースでご相談に見えること方も多い。

広い範囲での権限を保有した経験のある「経営のプロ」人材からは、「次の仕事を最後の住処としたいと思っており、最終的な意思決定をできる仕事がしたいので、今回は外資系を検討のリストからはずしたい」と言われるケースも多い。

長期にその企業で活躍したいと思っているミドルマネジメント以上の方であれば、日本のオペレーションへの権限委譲度、グローバル・レベルで活躍している日本人の事例・ロールモデルの有無、についても、よく検討されることをお薦めしたい。

【②ファンド投資先を懸念】

二つ目のPEファンド等の投資先企業。
最近、特に増加しているのが、ファンド投資先の経営者だった方からのご相談。VCファンドよりも、再生の局面に入っていくバイアウト・ファンド傘下の企業の方が、この傾向は顕著。
産業再生機構で支援先に張り付いていた方や、ファンドの紹介で採用され、経営陣として活躍していたものの、短期間でファンドが売却を決めたというケースである。

「短期間に経営課題を抽出し、経営課題の解決をする」という期待役割の下、元戦略コンサルタント出身者が経営陣として参加するケースも多い。株主であるファンドの命を受け、企業内コンサル的な任務で事業会社の経営メンバーとなる場合である。

「経営のプロ」を目指すコンサルタント出身者やMBAホルダーで、事業会社での経験が少ない方が、事業会社側へと「ルビコン川を渡り」実績をつくるには、最適なソフトランディング・ポジションであろう。
再生の局面、ということで、経営陣・従業員ともに危機感が共有されているという意味から、落下傘的に入社したとしても、抵抗勢力は少ない場合が多い。

経営課題を抽出しやすく、処方箋は効きやすく、その方が活躍する前後でのデルタ(変化)がわかりやすいため、顕著な実績・功績を作りやすい環境といえる。

弊社も、ここ2〜3年、PEファンドからご相談をいただき、このようなCOOや経営企画の経営者、経営チームをご紹介する仕事をさせていただく機会が増加している。
ただ、この場合にも、

  •  (市場環境から)再生にどの程度の時間的猶予が与えられているか
  •  ファンド(株主)が、どの程度、抜本的な再生を望んでいるか、
  •  V字回復するまでの深い谷の期間を、どの程度の猶予を持って待ってもらえる体制か(他の株主との関係、どのような投資家を抱えたファンドの性格か等)

が、「経営のプロ」としての実績を作りきれるかどうか、の分かれ目となってくる。
ファンド(株主)と共に「再生の100日プラン」を作成し、実行。小さな成功を積み上げ、抜本的に収益力を伸ばすのはこれから! と思っていた矢先に、ファンドが売却を決定。

新しい親会社は改革路線を踏襲しなかったり、中途採用で入社した「経営のプロ」不要論があったり・・・。ということで、次の活躍の場を求める、という構図になってくるケースを最近よく拝見する。

  •  「思っていたよりもファンドのexitのタイミングが早かった」
  •  「入社して、たった4ヶ月で売却が決まった」
  •  「もっと腰をすえて再生を行いたかったが、機関投資家からのプレッシャーもあるファンド傘下では、短期集中型のQuick Win的戦略実行しかできなかった」

という想いの中、「次はファンド傘下でない企業で、じっくりと本質的な収益力増加に取り組みたい」という意向になる方も多いようだ。

再生の事例は注目されていることも多い。したがって、「●●社を再生させた経営メンバー」ともなれば、「わかりやすい実績」を持っている人材として、市場価値を急速に高めることができる。
「経営のプロ候補」が「経営のプロ」として認知されるように急成長するには、絶好の機会と言えるだろう。
「経営のプロ」への成長の場を獲得したい、と考えるのであれば、場を選ぶ前提として

  •  経営メンバー
  •  経営課題の有無
  •  時間軸
  • ステイクホルダーの関係性

の見極めが、KSF(成功要因)である、と私は考えている。


一緒に変革を行う経営メンバーや現場だけでなく、株主がどんな想いを持っているのかを理解した上で、「再生」や「第二創業」の現場に入っていくことも、非常に重要なのではないか、ということをいくつかの事例を通して感じている今日この頃である。
(次号に続く)

 

こんにちは。
グロービス・マネジメント・バンク代表の岡島悦子です。

このたび、遅ればせながらではありますが、弊社グロービス・マネジメント・バンクでも「社長ブログ」を始めることにいたしました。

私のシゴト(所謂ヘッドハンティング)の「現場」では、

  • 年間約300名の経営者と「組織課題」の解決方法
  • 年間約1000名の「経営のプロ」候補者とキャリア構築方法

について、日々ディスカッションさせていただいています。

このディスカッションは「ヒト」という切り口での「一次情報」の宝庫。

この一次情報の蓄積を、整理・分析することによって、

  • 世の中の新潮流
  • パラダイムシフトの兆候
  • 一定の法則

等が見えてくることがあります。

 

このブログでは、私が最近、候補者や経営者と話しをする中で、頻発する出来事や、気になる事象を、

「私なりに」分析し、「意味合い」を抽出して「インサイト(洞察)」に昇華させていくことを試み、発信していきたいと思っています。

今、想い浮かんでいるテーマとしては、以下のようなものです。もちろんジョブ・マーケットの最新トレンドなどもお届けしていきます。

  • 「白馬の王子症候群」と「青い鳥症候群」
  • 「COO論、No.2論」
  • 「経営のプロの条件とは」
  • 「経営のプロは創れるか」
  • 「3本の矢:チームで転職するという選択肢」
  • 「なぜベンチャー企業の中でも採用力に差が出るのか」
  • 「採用力向上に効くレシピ」
  • 「企業価値評価と人材価値評価」
  • 「脳科学とキャリアデザイン」
  • 「自己認識と自己理解」
  • 「成長意欲と動体視力」・・・

このブログは
 

  • 「経営のプロ」を目指すハイスペックな人材の方々
  • 「経営のプロ」を採用中・採用予定の経営者の皆様
  • 「組織開発」「人材」という観点から、世の中のパラダイムシフトを読み取ることに興味のある方々

等にお読みいただき、読者の皆様とも意見交換させていただきながら、「経営のプロを創るチエ」を共創していくことができれば嬉しいなぁと思っています。 ぜひご協力ください。

 

グロービス・マネジメント・バンク 代表取締役 岡島悦子

代表プロフィール

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岡島悦子(おかじまえつこ)

プロノバ 代表取締社長/
ユーグレナ 取締役CHRO

経営チーム強化コンサルタント、ヘッドハンター、リーダー育成のプロ。
「日本に"経営のプロ"を増やす」ことをミッションに、経営のプロが育つ機会(場)を創出し続けている。

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