最近、企業の急成長や再生をドライブしてきた「経営のプロ」、それもCOOレベルの方から「当初のミッションは達成したので、新しい活躍の場を探したい」とご相談を受けることが増えている。そこで共通しているのが、次は「以下の3つ以外のNo.2のポジション」を探したいというご相談。

  1. 外資系企業 
  2. PEファンド投資先 
  3. オーナー系(創業者社長のいる)企業

「自分はゼロから1をつくる『起業家タイプ』ではないので、トップを支えるNo.2として貢献したい」という志向の方。
弊社は、「経営のプロ(通称ケイプロ)」人材を企業にご紹介している。「明確な経営課題があり、内部昇格ではなく、社外から経営者を採用したい」という企業は、どうしても上記3つのタイプの企業が多い。


今回は、この3つのタイプにCOOとして入社することのリスクとリターンについて、考えてみたいと思う。
「経営のプロ候補」の方々が、意思決定をする際の参考にしていただければと思う。「実績をつくる」というリターンは明確な場合も多いので、存在するリスクが、自分のキャリアにとって吸収可能なリスクなのかをお考えいただければと思っている。

また、COOやNo.2をお探しの経営者の方々には、候補者が応募や入社を懸念する理由、の参考にしていただければと思う次第である。

尚、トップを支えるNo.2と一口に言っても、多様な種類がある。弊社に「No.2を採用したい」とご相談がある場合にも、No.2が解決すべき経営課題の種類によって、以下のようなタイプに分類できるのではないかと思っている。

  •  後継者候補型
  •  後見人型
  •  参謀型
  •  変革推進ワンポイント・リリーフ型
  •  第二創業請負人型
  •  組織開発専任型
  •  執行専任型

この分類の説明については、長くなるので別の機会にゆずりたい。

***
さて、問題の「3つのタイプ」について、それぞれ考えていきたい。「経営のプロ」ともいうべき方が、次の機会を考える際に「除外したい」というからには、以前のキャリアでのトラウマも含め、それなりの理由があるはずである。


【①外資系を懸念】

ひとつめの外資系企業。
成果主義が整備された企業が多いため、能力が認められれば機会を勝ち取っていくことができ、非常に早回しで「経営のプロ」としての実績が創れる可能性の高い企業群。

「わかりやすい実績」をつくりやすい企業群として、「経営のプロ」を目指す人にも人気が高い。またグローバルな視点、活躍の機会を持てる、という意味からも、良いキャリア・オプションだと思う。

しかしながら、ある程度のマネジメント・レベルまで上り詰めると(日本のオペレーションへの権限委譲度合いによるが)、本国のヘッドクオーターに意思決定権が集中していたり、P/Lの権限はもらえてもB/Sの権限をもらえなかったりという理由から、日本での戦略オプションをあまり持てないフラストレーションを抱える「経営のプロ」は多いようである。

成果主義が徹底している結果として、若くして昇進し、比較的早めにグラスシーリング(見えない天井)を実感してしまう、というケースでご相談に見えること方も多い。

広い範囲での権限を保有した経験のある「経営のプロ」人材からは、「次の仕事を最後の住処としたいと思っており、最終的な意思決定をできる仕事がしたいので、今回は外資系を検討のリストからはずしたい」と言われるケースも多い。

長期にその企業で活躍したいと思っているミドルマネジメント以上の方であれば、日本のオペレーションへの権限委譲度、グローバル・レベルで活躍している日本人の事例・ロールモデルの有無、についても、よく検討されることをお薦めしたい。

【②ファンド投資先を懸念】

二つ目のPEファンド等の投資先企業。
最近、特に増加しているのが、ファンド投資先の経営者だった方からのご相談。VCファンドよりも、再生の局面に入っていくバイアウト・ファンド傘下の企業の方が、この傾向は顕著。
産業再生機構で支援先に張り付いていた方や、ファンドの紹介で採用され、経営陣として活躍していたものの、短期間でファンドが売却を決めたというケースである。

「短期間に経営課題を抽出し、経営課題の解決をする」という期待役割の下、元戦略コンサルタント出身者が経営陣として参加するケースも多い。株主であるファンドの命を受け、企業内コンサル的な任務で事業会社の経営メンバーとなる場合である。

「経営のプロ」を目指すコンサルタント出身者やMBAホルダーで、事業会社での経験が少ない方が、事業会社側へと「ルビコン川を渡り」実績をつくるには、最適なソフトランディング・ポジションであろう。
再生の局面、ということで、経営陣・従業員ともに危機感が共有されているという意味から、落下傘的に入社したとしても、抵抗勢力は少ない場合が多い。

経営課題を抽出しやすく、処方箋は効きやすく、その方が活躍する前後でのデルタ(変化)がわかりやすいため、顕著な実績・功績を作りやすい環境といえる。

弊社も、ここ2〜3年、PEファンドからご相談をいただき、このようなCOOや経営企画の経営者、経営チームをご紹介する仕事をさせていただく機会が増加している。
ただ、この場合にも、

  •  (市場環境から)再生にどの程度の時間的猶予が与えられているか
  •  ファンド(株主)が、どの程度、抜本的な再生を望んでいるか、
  •  V字回復するまでの深い谷の期間を、どの程度の猶予を持って待ってもらえる体制か(他の株主との関係、どのような投資家を抱えたファンドの性格か等)

が、「経営のプロ」としての実績を作りきれるかどうか、の分かれ目となってくる。
ファンド(株主)と共に「再生の100日プラン」を作成し、実行。小さな成功を積み上げ、抜本的に収益力を伸ばすのはこれから! と思っていた矢先に、ファンドが売却を決定。

新しい親会社は改革路線を踏襲しなかったり、中途採用で入社した「経営のプロ」不要論があったり・・・。ということで、次の活躍の場を求める、という構図になってくるケースを最近よく拝見する。

  •  「思っていたよりもファンドのexitのタイミングが早かった」
  •  「入社して、たった4ヶ月で売却が決まった」
  •  「もっと腰をすえて再生を行いたかったが、機関投資家からのプレッシャーもあるファンド傘下では、短期集中型のQuick Win的戦略実行しかできなかった」

という想いの中、「次はファンド傘下でない企業で、じっくりと本質的な収益力増加に取り組みたい」という意向になる方も多いようだ。

再生の事例は注目されていることも多い。したがって、「●●社を再生させた経営メンバー」ともなれば、「わかりやすい実績」を持っている人材として、市場価値を急速に高めることができる。
「経営のプロ候補」が「経営のプロ」として認知されるように急成長するには、絶好の機会と言えるだろう。
「経営のプロ」への成長の場を獲得したい、と考えるのであれば、場を選ぶ前提として

  •  経営メンバー
  •  経営課題の有無
  •  時間軸
  • ステイクホルダーの関係性

の見極めが、KSF(成功要因)である、と私は考えている。


一緒に変革を行う経営メンバーや現場だけでなく、株主がどんな想いを持っているのかを理解した上で、「再生」や「第二創業」の現場に入っていくことも、非常に重要なのではないか、ということをいくつかの事例を通して感じている今日この頃である。
(次号に続く)

 

代表プロフィール

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岡島悦子(おかじまえつこ)

プロノバ 代表取締社長/
ユーグレナ 取締役CHRO

経営チーム強化コンサルタント、ヘッドハンター、リーダー育成のプロ。
「日本に"経営のプロ"を増やす」ことをミッションに、経営のプロが育つ機会(場)を創出し続けている。

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