先週金曜日、弊グループのグロービス・マネジメント・スクール(GMS)のトップセミナー で川口順子参議院議員(元環境大臣、元外務大臣)にご講演をいただき、講演後の対談のお相手をつとめさせていただきました。

対談の内容としては↓の通り。

  • 「存在感」というスキル 〜いま世界で通じるリーダーシップの形〜

同じ日本人女性であることが、心の底からうれしくなるような、本当にステキな方でした!

マスコミを通じて拝見するイメージでは、まさに「世界レベルのリーダー」。しかしながら、川口さんの著書「涙は女の武器じゃない より子流『しなやか激闘録』」読ませていただいて、とても人間味あふれる方なのではないか、と密かに思い対談にのぞみました。

実際に対談させていただくと、実績に裏打ちされた豊富な知識とコンテンツをお持ちであり、それを極めてロジカルにお話される姿と、地球規模の事例の数々に圧倒されました!

その一方で、次世代のリーダー達に心からエールを送って下さる際に、ご自身の言葉で非常に率直にお話いただき、(僭越ではありますが)人間力のすばらしさがにじみ出すチャーミングさに、大感激しました。

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ご講演の内容、ならびに対談の内容については、後日KEY PERSON フロントランナーの志にアップされるようなので、ここでは「いま、世界に通じるリーダーシップの形」について、印象に残った部分を記載させていただきます。

1. 今、世界に通じるリーダーシップとは

特に環境という分野において、世界を牽引するリーダーシップをとってこられた川口さんですが、日本という国が世界で存在感を示しリーダーシップを発揮していくには、以下の要件が必要ではないか、とのお話いただきました。

  • 実績
    • 例えば、京都議定書を推進するにあたっても、日本には机上の空論ではなく「省エネ」分野で実績があり、世界に具体的事例としての実績で見せることができることに実現可能性を示せ、説得力を持って議論を推進することができる
  • 尊敬
    • 上記の実績だけでは世界レベルで発言権を持つことはできない。あわせて国の品格、文化、民度、といった国の総合力としての品格が求められる
  • 大義
    • 一段高いレベルの崇高な目的を示すことで、何かを達成しようとするための強力なビジョンで関係者をまとめ、リードすることができる
  • 知恵
    • 関係者の利益が相反するようなケースにおいて、「ものごとをまとめるためのチエをいかに出すことあできるか」が存在感をもったリーダーシップを出せる要件
  • 献身
    • 国際会議などでは、異なる意見の調整には、議長の役割が非常に重要であるが、その議長がどこまで献身的に目標達成のために自分自身が動けるか、ということが成否をわける。COP6ハーグ会議のオランダのプロンク議長の献身などがこの好例。

また、国の存在感を出すのは「人」であり、「日本の産業」は強いものの、「日本人の国際競争力」は必ずしも強くないのではないかというお話もありました。先日、ダボス会議から帰国されたばかりの川口さんの実感のこもったコメントだったのではないかと思われます。

そういった意味で、川口さんのコラムに書かれていた「ジュリアーニ元NY市長が考えるリーダーが備えるべき6つの資質」についてもコリン・パウエル氏やアフガニスタンのカルザイ大統領といった世界のリーダーの事例も交えながら、ご説明いただきました。こうした世界のリーダーの等身大の姿を直接知っておられる川口さんのご説明だからこそ、非常に腹落ち感のある、いいお話だったと思います。

①未来を見据えて方向性を示すことができる
②必ず成功すると信じる楽天性がある
③その方向性を示すに際し反対を押し切る勇気を持つ
④十分に勉強、準備している
⑤チームワークを進められる
⑥人にコミュニケイトできる

そして最後にポツリと、「人を愛することができる」と。
話を聞きながら、カルザイ大統領がまさにこの資質を備えていると思いました。

(出典:ジュリアーニ元NY市長 「リーダーシップ」についての講演より、川口氏が抜粋)

2. 川口氏はどのようにして「世界で通じるリーダーシップスキル」を獲得されたか

私達よりも20年以上も先輩である川口さん。政治家の2代目でもなく、女性である川口さんが、今とは異なる時代背景の中で、どのようにして世界レベルのリーダーになってこられたのか、にとても興味がありました。また参加者の方々にとってもヒントとなる示唆があるのではないかと思い、質問させていたご回答の中から、キーとなるものを以下に抜粋してみました。

  • 親からも「キューピー(チャンスの女神)には、前髪しかない」と教えられた。考えて考えて考えるのに疲れたら、意思決定し、腹をくくって徹底的にやる。現状の選択肢が一番いいと信じて突き進む、という信条を持つことができた
  • 高校時代に留学したことによって、「(外国人も)人間はみんな同じなんだ」という視点を得ることができ、グローバルな視点を自然に持てるようになった
  • 機会をつかむ力、異文化にあわせる柔軟性・適応力を培うことができた
  • 留学時代、家族、友人、官庁、サントリー、国際会議、政界、といつもいい人に恵まれ、いつも多くの刺激を与えられてきた
  • 官庁ではトコトン討議し、知恵を出すことを身に着けた
  • 出向した世界銀行では、論理思考力の重要性を再認識し、論理的構成を考え文書にするスキルを培った
  • サントリーでは、コスト意識、顧客志向、ということを実体験を通じて吸収した
  • 国際舞台での経験を通じて、「世界の中にある日本」ということを再認識し、国際的な視点を持たなければならない、日本人の国際競争力をあげなければならない、と痛感した
  • これらすべての前提には、「社会の役に立ちたいという想い」と「人に貢献できる喜び」が、すべての原動力になっている

3. 次世代のリーダー予備軍に贈るアドバイス

ご講演、対談、懇親会を含め、心温まるアドバイスを沢山いただけたと思っています。特にその中でも、以下の3つが心に残るアドバイスだったと思っています。

  • 国内派・国際派などといっている時代は終焉しており、言語ができるとか言うレベルではなく、「世界の中の日本」という視点を、常に忘れないでほしい
  • 国の存在感を出すのは「人」であり、ぜひ日本人個々人の国際競争力をあげる努力をしてほしい
  • 現状の選択肢が一番いいと信じ、迷わず楽しみながら、徹底的に突き進んでほしい

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(↓講演後のツーショット。川口さんの勝負服の色は赤。今日も赤を着てきてくださるのではないかなぁという仮説はありました・・・。赤にピンクでは失礼かなぁとも心配しつつ、ご本の中に「日本の政治家や官僚は押しなべてドブネズミの世界。」との描写があったので、それではいけないと思い、私も思い切ってピンクの服で登場してしまいました・・・)

番外
対談後、懇親会までの間、控え室で2人でお話させていただきました。

男性の参加者も多かったので、あえて女性リーダーとしての視点については、対談の中ではご質問するのを控えました。が、控え室では「女性ならでは」といった部 分も、少しだけ伺わせていただきました。ご両親に頼りすぎず、家族以外の方々のお力もうまくお借りになりながら家事や育児をやってこられたこと、タイムマネジメント、などについて も伺わせていただきました。

「それでも私は第二世代だから、先人はもっと大変だったに違いないわ」「主人もとても子育てに積極的だったので私はラッキーで」とお話いただき、しなやかな強さに心打たれました。

懇親会の席である女性が「川口君(息子さん)と同級生だったのですが、川口君のお母さんはとても料理が上手と言っていました」とお話すると、「うわー、そんなこと息子からは言われたことがないので、本当にうれしいわ」ととても可愛く喜んでおられたのが印象的でした。

また、ダボス会議などで、ぜひお話できる機会ができれば、と心から思った幸福な機会でした。

川口さん、本当にご多忙な中、貴重なお時間をいただき、本当にありがとうございました。

グロービス・マネジメント・バンク 
代表取締役 岡島悦子

代表プロフィール

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岡島悦子(おかじまえつこ)

プロノバ 代表取締社長/
ユーグレナ 取締役CHRO

経営チーム強化コンサルタント、ヘッドハンター、リーダー育成のプロ。
「日本に"経営のプロ"を増やす」ことをミッションに、経営のプロが育つ機会(場)を創出し続けている。

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