親友でアルファブロガーとして有名なチカちゃん、こと渡辺千賀ヒューマン2.0 web新時代の働き方(かもしれない)を出版!スバラシイ。

彼女とは、17年来の友人で、三菱商事女子総合職仲間。新卒総合職200人くらい採用していた時代、私が3期で女子2人、彼女が4期で女子1人という、「天然記念物」的境遇で入社したころからのつきあい。ハワイでの彼女の結婚式でのブライド・メイドも私でした・・・。

私のほうが(いちおう)先輩ながら、その後、ビジネススクールに行ったり、マッキンゼーに行ったり、というのは私が完全に「後追い的おっかけ」になっている(笑)。

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と前置きはいいとして・・・

早速、一気に本、読みました(出版日8日に買おうと思っていたら、夫が買ってきて読んでいたので、夫婦で一冊になってしまいました(ごめんなさい))。

で、内容ですが、はっきり言って、すばらしく良い本。

フラットする世界で描かれている「最後にどういう仕事だけがローカルに生き残るか」のエッセンスが、シリコンバレーの事例満載で書かれている。

シリコンバレーという極めて特殊な世界で展開される「ヒューマン2.0的な働き方」を、事例や統計を駆使して紹介。こういうスタイルを「好き」という人で、「能力」のある人(ここが重要)にとっての選択肢=「シリコンバレー的働き方・生き方」を提案している。

シリコンバレーでフリーランスで働いている友人を個別では知っていても、それがどういう文脈の上に成り立っているかを明らかにした本は今までになかった切り口だと思う。それを彼女は、シリコンバレーという生態系のインフラ的要素を抽出し、その要素故に「ヒューマン2.0」的な働き方が存在することを提示。

 

大事なことは、シリコンバレーには「ヒューマン2.0」的な働き方を支える環境=ゲームのルールが存在しているからこそ機能しており、このゲームで働けない人はシリコンバレーを去る、という図式が存在しているところ。だからこそ、彼女は「シリコンバレーで働いてみたい」という人は自分の適性を見極めたうえで「どうぞ検討してみて」といっている(その上、サポートもしますよ・・・とも)

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さて、日本にいる私たちがここで考えなければならないのは、こうした「ヒューマン2.0的働き方」の波が日本にもやってくるか、という命題。

ヘッドハンターである私にとっても、非常に大きな命題である。(なぜなら私たちの仕事にも大きなパラダイムシフトが訪れるかもしれないため)。

そして私の仮説は、
YES = ヒューマン2.0的働き方は日本にもやってくる
というもの。

 

【フリーランス増加の兆候】

現に、私の周囲のイケテイル人の中にも、フリーランス的に働き、プロジェクト型チームで仕事を推進している人が、少しずつ増えている。

経歴的には、元コンサルタントが圧倒的に多い。同じコンサルティングファームで働いていた人どうしが、ゆるい連携を持って仕事をするケース。共通言語を持っているため、いわゆる「あ・うん」の呼吸的にお互いの期待値をコントロールすることが可能なため、うまく機能しているらしい。

グロービスの講師をしていただいている方の中にも、元々は事業会社やコンサルティングファームの一線で活躍し、今はフリーランスとなられた方も少なくない。メインの仕事としてはフリーランスでコンサルタントなどを請負い、講師業務もしてくださっている。

コンサルティングや投資業務をしながら、監査役や社外取締役を兼任されている方も増加している。

もちろん、この本の記載のように、

「シリコンバレーの全就業人口のうち、15〜30%がフリーランス。」

というように、日本がすぐに変化していくとは思えない。上述のようにシリコンバレーの生態系の成り立ちとゲームのルールは、日本には存在していないからである。

しかしながら、日本の環境も変化してきている。中途採用を推進する大企業も増えている。スペシャリスト採用のみだった中途採用が、所謂コア人材採用にまで広がっている。すなわち終身雇用的パラダイムは変化してきている。経営の根幹に関連する業務も、手塩にかけたプロパー社員でなく、即戦力として実績をだしてくれる中途採用社員にも開放し始めている。

また、株主の声が大きくなり、企業は急成長を求められている。要は成長のスピードが重要。そうした中、効率化のためのアウトソーシングではなく、「時間を買う」ための「プロへのアウトソーシング」の動きも加速している。

「殿、外様には、このような重要な仕事は任せることができません」という時代が終わりつつあるということである。

「コンサルティング・ファームなどに依頼をして結局使えなくって痛い目にあった」という話は、実は一昔前の話。依頼する側と依頼される側の期待値コントロールがうまくいっていなかった、という話のようであり、だんだんと双方が学習してきた結果、期待値コントロールのレベル観は格段に上昇しているようである。

従って、フリーランス(チーム)に仕事を依頼する土壌(企業側のマインド)は整備されつつある。

【報酬問題】

ただ、一番難しいのは「報酬の値決め」。フリーランスの人(あるいはチーム)に依頼する時に、「いくら払うのが適性か?」というものが、まだまだ日本では定まっていないと思われる。それゆえ、フリーランスを志向する人たちも、どのくらいの報酬を得ることができるのか、が不安(周囲に事例情報も少ない)で、フリーになることに二の足を踏んでいるような気がする。

この辺は、市場メカニズムが存在しないと「適性値」が明確になっていかないような気がする。ある程度の経験値をベースに「この仕事ならこれくらい」という適性値が収斂されていくのではないだろうか。

【社会的認知】
そして最後に残るハードルが「社会的認知」問題。日本では、まだまだ「フリーランス=脱サラ=組織に属して働けない個人主義的な人」というイメージが強いような気がする(事実無根だとは思いますが・・・)。

人と名刺交換する際に「(企業名)の(氏名)です」と自己紹介する人が多いことでもわかるように、社への帰属意識は非常に高い。どの企業に属しているかが、まるでステータス・シンボルのように勘違いしている人もいるほどである。

ただし、企業に属する人・フリーランスが、勝ち組・負け組み、という構図ではなく、あくまでも「志向するスタイルの違い」という風に必ずや変化していくのではないか、と思っている。

これは、現在フリーランスで働く人が、どのくらい付加価値の高いプロフェッショナルな仕事を提供できるか、という事例を積み上げていけるか、にかかっていると思われる。

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一度しかない人生、仕事できちっと価値は提供しつつも、「自分の望むスタイルで働く」という選択肢が、少しでも増えるといいなぁと日々思っている。「人間は好きなことをやっているときに一番力が発揮できる」と信じているからである。

ヒューマン2.0 web新時代の働き方(かもしれない)では、渡辺千賀という実物の人物が、「自分の望むスタイルで働いてハッピー」というロール・モデルを提示してくれている良書だと思う次第である。

グロービス・マネジメント・バンク 代表取締役 岡島悦子

追伸:
千賀ちゃん、出版記念パーティーにかけつけます!

代表プロフィール

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岡島悦子(おかじまえつこ)

プロノバ 代表取締社長/
ユーグレナ 取締役CHRO

経営チーム強化コンサルタント、ヘッドハンター、リーダー育成のプロ。
「日本に"経営のプロ"を増やす」ことをミッションに、経営のプロが育つ機会(場)を創出し続けている。

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